しんぱしー

漫画・アニメのレビューを書いてます

夏子の酒 マンガレビュー 読み終わって感じる!芸術的作品とはこういうもの!

多くの人に共感してもらいたい、作者の努力が伝わる名作

 

f:id:komebicchan:20170113170857p:plain

あらすじ

東京でコピーライターの仕事をしている佐伯夏子の実家は佐伯酒造という造り酒屋。
コピーライターの仕事が波に乗った矢先、兄が急死。亡き兄の意志を継ぎ、実家に戻った夏子は伝説の米「龍錦」で最高の酒を造ろうとする。

 

夏子の酒 作品レビュー

この作品は正に「酒」にこだわって作られた物語。

一見した甘みは無いが、渋みと旨みをじわりじわりと感じさせてくれる作品です。

実に味わい深く、秀逸な作品です。



作品に対しての明確なテーマ設定と、それに基づいて入念な調査、事前準備を行なっているのが伺えます。

また、製作中も1ページ、1ページ。1コマ、1コマ

細部に渡るまで入念な書き込みを行ない、手間や労力を惜しまない姿勢が素晴らしいです。

 

そんなストイックで真面目な姿を見せられると、本来の「漫画家」の仕事とはこういうものを指すのだと、改めて実感させられる作品です。

下手なフィクション作品よりも、現実的な問題を直視し追い求めた作品の方が何十倍も味があります。

 

f:id:komebicchan:20170113172044p:plain

 

驚愕するのは、この作品が世に出されたのが、実に二十年以上も前の事であること。

 

この時から既に、農業の問題点が作中で指摘されているように問題視されていた、という事です。

今現在、日本の酒造業がどのような酒造りを行なっているのか。そして、今現在、市場に出回っている酒類はどのような醸造工程を経て作られた物なのか。また、日本の農業は、どのような土を使って作物を育てているのか、とても心配でなりません。


この作品を通して、米作りや酒造りの大変さや苦労を改めて見てみると、万物には霊魂が宿るといった信仰も決して原始的な発想から生まれたものではないとすら感じます。

 

命を育てるという事がいかに苦労の果てに生まれるものであるか。そしてその苦労は決して軽んじられるものではなく、また無下にされるものでもない。それはつまり、生命への感謝であるという事。この作品を通して、私はそのように感じました。

 

f:id:komebicchan:20170113172508p:plain


最後に、漫画に限らず芸術というのは、結局、価値観や感性の共鳴だと思っているので、一つの作品が万人に受け入れられるとは決して思わないのですが、それでも、この作品はぜひ多くの人に読んでもらいたいと思える作品です。

 

 

スポンサードリンク

 

 

 

この作品をオススメしたい方

  • ノンフィクションが好きな人
  • お酒が好きな人
  • 社会問題に興味がある人
  • 芸術的作品が好きな人
  • アクションシーンが無いマンガでも読める人